日本探偵小説史上の三大奇書【292,293,294】
※「日本異端文学史上の三大偉業」などとも呼ばれます。
竹本健治の『匣の中の失楽』(はこのなかのしつらく)を加えて「四大奇書」と呼ぶ場合もあります。
▼それぞれ、1行目は小説の作者です。
【292】『黒死館殺人事件』
- 小栗虫太郎(おぐり・むしたろう)〈本名:小栗栄次郎〉
- 主人公は、衒学を駆使した超絶的推理力を発揮する素人探偵・法水麟太郎(のりみず・りんたろう)。 S・S・ヴァン=ダインの『グリーン家殺人事件』の影響が見られる(作中にも言及されている)。
- 日本唯一のゴシック・ミステリとも言われる。
【293】『ドグラ・マグラ』
- 夢野久作〈出家名:杉山泰道(やすみち) /幼名:杉山直樹〉
- 松本俊夫を監督として1988年に映画化された。同映画では、松田洋治が呉一郎役を、桂枝雀が正木博士役を、室田日出男が若林博士役を、それぞれ演じた。
- 「読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」と言われる。
【294】『虚無への供物』
- 中井英夫
- 洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司(そうじ)・紅司(こうじ)兄弟、従弟の藍司(あいじ)らのいる氷沼(ひぬま)家を舞台として繰り広げられる殺人事件が描かれている。
- 前半の第二章までしかない未完成状態での応募だった1962年の江戸川乱歩賞では次席にとどまった(受賞作は戸川昌子の『大いなる幻影』と佐賀潜の『華やかな死体』)。1964年、講談社から完成版が刊行された。(「塔晶夫」名義)